このサイトは2020年3月31日まで稼働していた、feel NIPPONの活動報告サイトのアーカイブです。
2019年度までの活動報告をご覧いただけます(現在、更新はしておりません)。

~プロジェクトに迫る~

本物の素晴らしさを「かたち」にして広く発信

小野川沿いに江戸の町並みが残る佐原

平成23年、佐原商工会議所で取り組んでいるプロジェクトは、"江戸優り佐原の町並み空間を活用した暮らしぶりブランド化事業"。古き良きものを受け継いできた「江戸優りの文化」を商品化する取り組みである。江戸から昭和に至る様々な年代の建物とともに、先人たちが残してくれた「江戸優り」の文化を継承するだけでなく、現代の感性を活かし磨きをかける。それを形にして、本当に良いものを広くたくさんの人々に届け、佐原を知ってほしいという願いでプロジェクトが立ち上がったのだ。
その本物を極める佐原スピリットは、農産物の栽培にも込められていることに着目し、食と文化の融合を形にする取り組みがスタートした。

まず第一弾として無花果(イチジク)をメインにした商品開発に着手。市場に出回っている無花果のほとんどが完熟前に収穫されたものだが、佐原の無花果は完熟にこだわり、その大きさと採れたての旨さに、食べた人は皆驚くと言う。こだわりの無花果農家はテレビ番組でも紹介され、大きな反響を呼んだ。
そして無花果と佐原の特産品である白みりん、減農薬、EM(有用微生物群)有機肥料で育てた玄米粉を使用した有機玄米粉などを組み合わせた新商品の開発も進められている。ふんわりもっちりとした口当たりのシフォンケーキ、上品な甘さのコンポート、和菓子伝統の作り方を活かした宝石のように淡いピンクのジュレなど、佐原の歴史が生んだ食文化をさらに進化させたアイデアが日々誕生している。

また、食のマイスターとして活躍している松本栄文氏を迎え、地元野菜で作る滋味あふれるスープやお粥のレシピを作成。常に変わらない美味しさを提供できるよう、レトルト商品の開発も手掛けている。

小野川での灯ろう流し

訪れる人へのホスピタリティを大切にした環境づくり

舟めぐり乗船体験/夢灯ろう流し体験

プロジェクトのもうひとつの柱として、心に残る思い出づくりができる「心の観光」のまちづくりを目指し、環境づくりにも力を注いでいる。佐原の暮らしぶりを体験してもらう拠点として、小野川沿いにある倉庫を改築したカフェ「河岸日和(かしびより)」がある。観光の合間に、江戸の面影を残す空間でほっと一息できるスペースである。本プロジェクトでは、そんな町屋カフェの体験も含めたモニターツアーを定期的に実施。その時期、いちばん魅力的な佐原と出会えるツアーを企画している。水辺からの景色を楽しむ舟めぐり、着物姿での町歩き、パワースポット体験など、一歩踏み込んだ楽しみが盛り込まれている。
これまでの参加者からのアンケートは「もっと時間をかけて、別の場所も周ってみたい」「ぜひまた、ゆっくり訪れてみたい」と言った意見が多く上がってきており、こうしたリピーターを取り込むツアーの開発も必要であろう。

佐原商工会議所の鎌形善枝さんも「とにかく人の力が大きい。地域の協力がなければ成立しないプロジェクトだが、長年佐原に住む人が多く、皆、地元愛が強いので"佐原の発展のために!"という共通の目標で、こころをひとつにして頑張っている」と笑顔を覗かせる。時代を超えて佐原の町が輝いてみえるのは、佐原を愛し続ける地元の人々の協力と強い絆で、町全体が一丸となって取り組んでいるからこその結果であろう。
「今後も佐原固有の文化・芸術へとつながる地域商品づくりに力を入れ、積極的に県内外へ発信していくことで、より多くの人々に佐原の伝統や文化に触れてもらい、佐原ブランド力を高めていきたい」 
そう語る鎌形さんの願いが叶うのは、そう遠くないのかもしれない。

ツアー日程表

町屋カフェ「河岸日和」

こだわりの水とコーヒー豆でていねいに淹れた、香り高くまろやかな「水出しコーヒー」が自慢。まるで我が家のようにくつろげる、親しみやすく落ち着いた空間。店内の一角には、整体を受けられる癒しのスペースもある。

営業時間 9:00~21:00
定休日 月曜定休(祝日の場合は翌日)
電話 0478-52-0023
佐原ならではの雰囲気が漂う町屋カフェ「河岸日和」

震災を越えて~3.11後の佐原

2011年3月11日。その日、日本全国に、そして佐原にも大きな試練が襲った。激しい揺れの中で瓦が落ち、道路が液状化する。衝撃的な体験と直後の瓦礫の山には、誰もが言葉を失ったという。
しかし、4日後には「がんばろう佐原」をスローガンにした活動が始まる。どこから手をつけたら良いのかもわからない状態だったが、救いはけが人が一人も出ず、当日もたくさんの観光客が訪れていたが、奇跡的に皆無事であった。
5月には、投げ銭スタイルのチャリティコンサートを企画。被災者でもある人たちが奏でる佐原囃子が流れると、会場には入りきれないほどの町中の人々が集まった。幼い頃から子守唄代わりに聞いてきた佐原囃子の音色の下、復興に向け、前向きに心をひとつにした瞬間だった。
地元への深い愛が大きな底力となり、現在の佐原は以前の面影を取り戻しつつある。昔の建築は、瓦を落として建物を守る造りのため、まだ屋根にシートがかかっている所もあるが、人々の生活は変わりなく営まれ、観光に訪れる人々の姿も復活している。

安政2年(1855年)に建てられた中村屋商店と震災で瓦が落ちて、現在も修復作業中の蔵