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~プロジェクトに迫る~

あのマンガのシーンに触れる「マンタビ」とは

映画やドラマのロケ地を巡る旅は古くからあり、近年では人気マンガやアニメゆかりの地にファンが訪れ、経済効果を上げている。日本のマンガは海外でも高い評価を得ており、札幌市も数多くのマンガ家を輩出、その作品の中にも札幌のスポットを舞台にしたシーンがたくさん描かれていることから、この貴重な財産を新しい観光資源として広く発信しようと、札幌商工会議所は、平成23年度に「マンガ等コンテンツ活用による新観光創出」プロジェクトを実施した。

いがらしゆみこ、佐藤秀峰、佐々木倫子、山岸凉子、大和和紀ら、札幌にゆかりのある作家やマンガを調査すると、かなりの数に上ることがわかった。そこで、マンガの中で描かれた札幌のスポットと、マンガのシーンを重ねて紹介する観光ルートマップ「マンタビ」[1]を制作。ルート内にある有名観光スポットや、市内の書店などに約5000部を配布した。マップを片手に、実際の風景にマンガの描写を重ね合わせることで、新鮮なバーチャル感覚を体感することができる。この新しい取り組みは北海道新聞の記事で注目されたことを皮切りに、他にも日本経済新聞、地元テレビ局などでも取り上げられ、大きな反響を呼んだ。「マップはどこで手に入るの?」「ぜひ追加で配布してほしい」など幅広い年代からの問い合わせがあり、好評を博している。

同時にマンタビ専用の公式ウェブサイト[2]も開設。プロジェクトの内容やマンタビに関するニュース、モニターツアーやシンポジウムのレポートなどを随時アップすることで、道内だけでなく全国に向けてマンタビの認知度を高めることができた。今後もウェブを上手く活用し、この発信力を最大限に活用する方針だ。

[1]在庫がなくなってしまうほど人気の「マンタビ」マップ/[2]マンタビ公式ウェブサイト

大きく立ちはだかった壁を乗り越えて

[3]「北海道大学」のポプラ並木

[4]1951年に開園した「札幌市円山動物園」

そして平成23年11月には、観光ルートマップ「マンタビ」を実際にバスで周る「マンタビモニターツアー」を実施した。「マンタビ」で取り上げている札幌市のスポットは、全部で21か所。札幌市時計台やさっぽろテレビ塔、赤レンガ庁舎などのスポットをはじめ、北海道大学[3]、円山動物園[4]、札幌ドームなどだ。これらはすべて近郊のエリア内にあるので、複数箇所を回るのにも時間がかからず、ファンにとってはマンガの「聖地巡礼」が短時間で楽しめる内容となっている[5]。ツアー当日はマンガに造詣の深いガイドが同行し、解説をしながら上記スポットに加え、札幌駅、大通公園、幌平橋を巡るという内容だ[6][7]。途中、マンガの制作関係者も加わり、スポットが登場するシーンについての説明や、制作秘話などを披露してもらい、参加者からは喜びの声があがった。

同時に、ツアーを商品化するにあたって、いくつかの課題を抽出することができた。今後ツアーが観光商品として展開していくには、魅力的な付加価値がどうしても必要となる。そこで、作品とコラボレーションしたグルメ体験や作者のトークショー、近郊の名湯である定山渓などで一泊するなど、マンガコンテンツがより輝き、観光商品として成立するツアーを現在企画している。
また今回「マンタビ」を実現するにあたり、非常に苦労し大きな壁になったのが著作権の問題だった。マンガごとの著作権による掲載可否は、同じ出版社でも担当者によって判断が変わってくるため、ひとつひとつ根気よく企画意図を伝えて交渉。非常に労力と時間を要することとなったものの、最終的には載せたい作品はほぼ達成することができた。これからは地元作者とも協力し、自分たちでマンガを制作することでそうした制限をなくし、ツアーなどをより充実させて、地域の活性化に繋げることも考えている。

[5]マップを真剣に見る参加者

[6]「いいひと。」(高橋しん著)などに登場するJR札幌駅でガイド

[7]「札幌まんがLayar」を使用した撮影の説明

アプリの開発で旅の面白さをステップアップ(札幌まんがLayar)

「マンタビ」をより楽しめる旅の友として、札幌商工会議所は無料のスマートフォンアプリ「札幌まんがLayer」を製作した。北海道に実在する小児脳神経外科医とその患者、家族のドラマを描き、文化庁芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品にもなった、医療ドキュメンタリー「義男の空」をキャラクターに抜擢。舞台となったスポットでスマートフォンをかざすと画面にキャラクターが現れ、一緒に記念撮影ができる[8][9]。また、観光客を意識し、マップビュー機能も搭載。で目的地までの道すじも示され、マンタビの楽しさをサポートする大きな役割を果たしている。

[8]「義男の空」(cエアーダイブ)の舞台となった「さっぽろテレビ塔」/[9]テレビ塔の下でスマートフォンをかざすと主人公が現れる(アプリを使用)