熊本県下第2の人口を有する八代市。市内にある日奈久(ひなぐ)地域は、開湯600年以上の歴史と良好な泉質と豊富な湯量を誇る、県下でも有数の温泉地である。しかし、昨今の温泉地の増加と旅行者ニーズの多様化により来訪者は減少。同時に地域の活力も失われつつある。そこで再度、八代及び日奈久地域の古き温泉街と路地裏に眠る資源を掘り起こして磨くことで、以前のような元気な地域を取り戻すべく、八代商工会議所では平成20年度に「路地裏ツーリズム日奈久」に取り組んだ。その結果を受け、平成22年度にはさらなる地域特産品のブランド化と、宿による癒しの提供などを主眼においた更なる魅力開発・発信を目的とし、「晩白柚アロマ(ばんぺいゆ)と湯治文化を活用したやつしろ式農商工連携プロジェクト」をスタートした。
平成20年度に取り組んだプロジェクトに引き続く形で、具体的なモノ・サービス商品の開発とプロモーションを通して「日奈久ブランド」の確立を目指した。日奈久温泉地では、収穫された晩白柚を丸ごと湯に浮かべてその香りを楽しむ習慣がある。そこで、八代特産である世界最大の柑橘類「晩白柚」の香りを活かした商品開発事業を行うことに決定した。まず、これまで廃棄処分されていた晩白柚の果皮を回収。晩白柚の香り成分である精油の抽出は、熊本高専八代キャンパスの技術協力により開発した水蒸気蒸留装置を用いて行った。この晩白柚と日奈久温泉の温泉水を混ぜ合わせ、晩白柚の特徴的な香りを1年中楽しめ、また温泉水ならではの洗い上がりを実現させた「八代育ち~晩白柚せっけん"ゆ"」が完成した。さらに、日奈久温泉の風土と湯治文化、温泉入浴と健康について学ぶ「日奈久温泉マイスター講座」を開催。正しい知識を持つ、価値の語り部である「日奈久温泉マイスター」の認定事業も行い、普及に努めた。
マイスター講座や広報活動により、日奈久温泉の良質な泉質や温泉を中心とした、地域の深い歴史物語を、地域住民に改めて再認識してもらった他、マイスター講座への参加を広く一般にも公募したことで、日奈久温泉の魅力を浸透させることに成功した。そこで今後は、新商品「晩白柚せっけん"ゆ"」の認知拡大と、晩白柚の香りを活かしたアロマオイル、入浴剤、クリームなど、更なる晩白柚アロマ関連商品の開発を検討している。また現在、日奈久温泉では観光客や市内外の訪問者に対し、女将と作る晩白柚アロマクリーム体験が実施されている。日奈久温泉マイスターについては、旅館組合が事業継承・継続することで、現代版の湯治場としての日奈久温泉のブランド化を図り、今後も新たな魅力を発信する機会としていくつもりだ。
平成20年度 | ・「"路地裏ツーリズム日奈久"路地裏と温泉と地域産品を結ぶ日奈久『地域ブランド』展開プロジェクト」を実施 ・晩白柚を使ったお土産菓子「銘菓 お告げの石」を開発 |
---|---|
平成21年度 | ・八代高専にて晩白柚エッセンシャルオイル抽出技術確立 |
平成22年度 | ・「晩白柚アロマと湯治文化を活用したやつしろ式農商工連携プロジェクト」始動 ・小惑星「BANPEIYU」命名及び記念式典の開催 ・阿蘇カドリードミニオンでのショーステージ「ばんぺいゆ太郎」開催 ・新商品「晩白柚せっけん"ゆ"」販売開始 |
平成20年度に取り組んだプロジェクトをきっかけに、日奈久温泉の旅館関係者や事業者との意識が高まり、担当者とのつながりがより緊密になったことで、平成22年度の全国展開プロジェクトに取り組むこととなりました。全国展開プロジェクトでは、そこに住む人々にとっては当たり前のような「こと」や「もの」を新たな視点で着目し、ブランド化を図りながら、全国に発信するための新商品開発や地域住民の意識向上に寄与し、特産品により繋がった新たな展開となって地域活性化が図られています。当所でも、プロジェクトを通じて、地域活性化に繋がる新商品開発やPR活動を今後も進めていきたいと考えています。