穏やかな水面をたたえる瀬戸内海を臨む今治市は、「来島海峡大橋」[1]「伯方・大島大橋」[2]「大三島橋」[3]「多々羅大橋」[4]などで6つの島々を結び、広島県尾道市まで続く「しまなみ海道」の玄関口である。日本を代表するタオルブランドの町としても有名であるが、戦国時代に絶大な勢力を誇っていた村上水軍が活躍していた頃から、海上交通の要の場所でもあり、現在も造船業が盛んである。今治造船[5]での進水式[6]には多くの人が集まり、その迫力に子供も大人も感動の声を上げる。船首でシャンパンが開き、くす玉が割られ、色とりどりのテープとともに海へ滑り出す姿は圧巻だ。浮きドックではなく、進水台から水面へと滑り下りるスタイルは今治ならではの貴重なセレモニーだ。また、風光明媚な観光スポットも数多くある。鏡面のように輝く海に浮かぶ島と優雅なフォルムを描く来島海峡大橋が一望できる、来島海峡展望館[7]。水平線に沈む夕日を眺めるデートスポットにもなっている亀老山(きろうさん)展望公園[8]では、訪れた恋人達が"離れない絆"を込めて施錠した鍵がたくさんぶら下がっている。サイクリングロードが整備されているので、レンタサイクルで風を感じながら周遊するのも楽しい。
そして一見、凪いで見える瀬戸内海だが、潮の流れは激しく、時には船を巻き込むほどの激しい渦潮が現れる。500年前の海賊気分になれる宮窪瀬戸での潮流体験[9]は、潮の流れを知り尽くした船長が潮流のすぐ近くまで船を寄せ、肌で海の醍醐味を感じられる迫力のクルージングだ。街中に目を向ければ、築城の名手、藤堂高虎が1604年(慶長9年)に完成させた今治城[10]がある。三重の堀に澄んだ海水を引き入れている海岸平城は全国でも珍しく、現在は約2500点の刀剣、武具、書画などが展示され、本物ならではの時空を超えたオーラを放っている。最上階からは市街地から遥か石鎚山までを眺望することができる。夜は美しくライトアップされ、春には桜の名所にもなっている。