ダイナミックにそびえる尾根に囲まれ、深い蒼の日本海を臨む糸魚川市。特殊な地質のルーツをたどっていくと、そこには人間の歴史を遥かに超えた、大地の物語が見えてくる。約2千万年前、日本列島は東西ふたつに分かれていた。ふたつの列島が浮かぶ、日本海と太平洋をつないでいた海峡だったのがフォッサマグナ。ラテン語で「深い溝」という意味だ。6,000メートル以上もの深さのフォッサマグナに、海底火山から噴き出した溶岩や火山灰などがたまり、やがて隆起して日本列島はひとつになる。東と西をつないだ境界の最西端に位置するのが糸魚川である。
大地の割れ目から誕生した、糸魚川という土地。海岸に打ち上げられる様々な種類の石には、それぞれの長い旅が刻まれている。中でもひときわ存在感を放っているのが翡翠(ヒスイ)[1]であり、糸魚川の文化とは切り離せないものである。縄文時代、世界最古の翡翠文化が糸魚川で始まっただけでなく、特に糸魚川のヒスイは硬質で貴重なものとされ、日本随一のヒスイ産地として知られている。さらに本格的な採取でなくても、波打ち際を歩きながら、清流で自然に磨かれた石を探しに県内外から足を運ぶ人も多い。もし海岸で気になる石を見つけたら「フォッサマグナミュージアム」[2][3]へ持って行ってみよう。専門知識を持った学芸員が無料で鑑定してくれるのだ。ミュージアムには鉱物や化石など、貴重なものが数多く展示され、地球誕生の壮大なドラマが、訪れる人のこころを引き込んでいる。また、日本庭園「翡翠園」[4]では、70トンもあるヒスイの原石を見ることができ、「谷村美術館・玉翠園」[5]にはシルクロードをイメージした幻想的な雰囲気が漂っている。