多くの著名人が愛した「恋しき」。その建物は風情にあふれ、造り込まれた日本庭園の眺めも圧巻だ。「おみやげ処」もあり、食事や休憩を含めてゆっくりと滞在するのがおすすめ。飲食店は「そば処」「cafe すいれん」「花みずき」の3つあり、中でも「花みずき」では、旅館として営業していた時代を知る料理長の料理が楽しめる。昼食、夕食ともに、懐石にしてはリーズナブル(要予約)なのもうれしい。高級感ある座敷の店内からは、「恋しき」自慢の庭園が臨める。

旧芦品群役所庁舎を移築して作られた資料館。第1展示室には縄文～古墳時代、第2展示室には備後国府跡を中心とする奈良･平安時代の出土遺物などの考古資料を展示している。資料館の建物自体も価値の高いもので、漆喰の壁、胴蛇腹、ひさし、車寄せのある玄関軒の飾りなど、洋風建築を観察して建てられた明治期の擬洋風建物になっている。現存するものとしては貴重な郡役所庁舎であることから、府中市重要有形文化財にも指定されている。

府中市は、江戸中期から受け継がれるタンスなどの高級家具の産地。桐箱、彫刻、建具などの木工業も古くから栄えている。府中家具木工資料館では、散逸しつつある古いタンスや木製の古民具、木工道具などを収集保存し、約2000点を収蔵。600点余りを常設展示する。そのほかに、家具の歴史や指物技術の変遷、家具産地の足跡に関する資料も展示している。日常的に触れていながら、あまり意識することのなかった家具の歴史を振り返ってみよう。

府中市出口町の小高い丘に祭られている、首から上がない地蔵。触れると、願いごとが叶うとされ、全国各地から多くの参拝者が訪れている。1977年5月18日に、畑の中から発掘されたもので、市内に住む男性の夢枕に地蔵が現れ、畑を掘り起こして地蔵を祭れば願いを叶える、というお告げにより掘り起こされた。男性はその後、腰痛、頭痛などの痛みがなくなったと言われている。毎年5月18日と11月18日には首無地蔵菩薩の大祭を開催する。

出口町を南北に通る石州街道は、江戸時代に銀商人が大阪方面から福山を経て石見銀山へと帰還する道であったことから、「銀山路」と呼ばれた。現在でも通り沿いには、昔ながらの黒壁や土壁の建物、茶屋跡や石州街道入口の石碑などが残り、長い歴史の足跡を感じ取ることができる。10名以上の大人数で観光するなら、ボランティアガイドによる名所旧跡案内もおすすめだ(ガイド1人につき1000円、要予約)。

府中焼きとは府中風のお好み焼きのこと。牛や豚のミンチの脂で、そばなどの数種の具をカリッとするまで焼き、たっぷりのキャベツが入っているのが主な特徴だ。「平の家」は、数ある府中焼き店のなかでも1952年創業という老舗。現在は先代から二代目に代わり、今年に入ってから店舗も移転、リニューアルオープンしているが、店の代名詞とも言える「生卵かけ」(600円)は健在だ。ソースと混ざり合ったまろやかな甘味がクセになる味わい。

家具などのものづくりの町として発展してきた府中には、様々なものづくり企業がある。なかでも有名なのはヒロボー株式会社。無線操縦の模型ヘリコプターなどのメーカーとして、世界のトップブランドだ。その工場に、広く一般に公開されるヒロボーライブファクトリーが併設されている。開発された商品が展示されるほか、ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功した「ライト･フライヤー号」の操縦席を再現したシミュレータなどもあり、大人も子供も楽しめる。