共通基準についての概要が固まる
豊富な水産資源に恵まれたいちき串木野市は、薩摩藩下にあった江戸時代に、『さつま揚げ』を生み出した地としても知られる。しかし、全国区では“さつま揚げ=鹿児島県”というイメージの方が強いことから、いちき串木野商工会議所が中心となって、元祖『さつま揚げ』のブランド化に取り組んでいる。その内容は、昔ながらの『さつま揚げ』の味を維持するため、材料や製法における共通基準を策定すること。具体的には、「近海産の魚のすり身を50%以上使う」「豆腐を使う」「具に地元産の野菜を入れる」など6つだ。全8社がプロジェクトに参加し、基準を満たした試作品も完成している。また、『さつま揚げ』以外の名産品を開発しようとする動きがあり、地元の有志たちによる加工品開発団体が参加。長野の『おやき』を、いちき串木野らしい食材を使ってアレンジした試作品を提案したりするなど、食の街としての体制づくりが進んでいる。
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鹿児島では『さつま揚げ』のことを『つけ揚げ』という。味だけでなく、たんぱく質やカルシウムなどの栄養素が豊富なことも、全国各地にまで広まった要因だ
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『日高水産加工』
久木山睦男(くきやまむつお)さん
「弊社の『さつま揚げ』は、スケソウダラのすり身をメインにして豆腐を練り込み、地酒や甘酒を加えています」。ふわりとした食感と酒の甘味があるのが特徴で、いちき串木野に伝わる伝統的な味だ。「プロジェクトでは、アジ、エソ、サメ、スケソウダラを使用した『さつま揚げ』と、それに地元産の味平かぼちゃを加えた2品を開発し、試食会でも上々の評価をいただきました」。問題点などはあるのだろうか。「第一は、今後の原材料の確保ですね」。多くの業者が基準を満たすだけの材料を調達しようとすると、串木野漁港に揚がるものだけでは足りない可能性があり、コストを抑えつつどう確保するかが問題なのだという。「難問ですが、地域の伝統を守る意味でも、今後の発展を担う意味でも着実に取り組んでいきたいと思います」
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「化学調味料を使わない」という決まりもある
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魚の味が強くて懐かしい味、という声も多い
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『風の里・羽の島』
尾崎京子(おざききょうこ)さん
『風の里・羽の島』は、地元食材の認知を高めるために、ケーキから漬け物まで様々な料理を開発する食品加工団体。「プロジェクトでは、小麦粉の生地でサツマイモを包んで、あんこやきな粉をつけて食べる『からいもんダゴ』という地元のお菓子にヒントを得て、長野の『おやき』のいちき串木野版を開発しました」。地元産のマグロ、ちりめん、さつま揚げ、牛肉、ヤーコン(=中南米産のキク科の根菜で栄養価が高い)をそれぞれ主な具にした5種がメインだ。「生地はパン系と小麦粉系の2種類があり、さつま揚げの『おやき』には海苔を入れてみたり、牛肉の『おやき』には相性のいいゴボウを使ったりしていますが、基本は地元産の食材で作っています」。中の具を気軽に変えられる『おやき』は、食材豊富なこの地域にピッタリだ。
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『風の里・羽の島』は地元の有志7人で活動
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様々な具があるので色合いも鮮やかだ
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『いちき串木野商工会議所』
立山英樹(たちやまひでき)さん
プロジェクトの発端と今後の展開
「2011年春の九州新幹線全線開通を前に“さつま揚げ=いちき串木野”という目標に少しでも近づけるよう、今後も基準の改定や試作品の改良を行っていきます。そのほか、手作りさつま揚げ体験や地引網体験などの体験型観光メニューもどんどん取り入れて、観光の面からもブランドの認知を図っていくことを考えています」
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羽田空港から飛行機で鹿児島空港へ、連絡バスに乗り換えJR鹿児島中央駅へ、鹿児島本線に乗り換えJR串木野駅へ【所要時間:約300分】
◎伊丹空港から伊丹空港から飛行機で鹿児島空港へ、連絡バスに乗り換えJR鹿児島中央駅へ、鹿児島本線に乗り換えJR串木野駅へ【所要時間:約180分】
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県道24号線を経て、南九州西回り自動車道鹿児島道路へ、市来ICで降りて国道3号線を経ていちき串木野市内へ【所要時間:約40分】