親しみやすい4品の試作品が完成!
日本国内には数多くの和牛ブランドが確立しているが、それらのルーツを探っていくと現在の新見市に伝わる『蔓牛』(つるうし)にたどり着く。『千屋牛』(ちやうし)は、その流れをくむ随一の名牛だ。その肉質は専門家の評価も高く“和牛の中の和牛”と言われているにもかかわらず、ブランドとしての認知が遅れているのが現状。そこで新見市では、行政が千屋牛のPRをする一方で、商工会議所による関連商品の開発が行われた。『コンビーフ』『ビーフシチュー』『肉まん』『野方かっぱ汁(かっぱ=バラの上の筋のような部位)』という4つの試作品を作成。それぞれに、霜降りや赤身の肉質の良さが感じられ、かつ商品化時には比較的手に取りやすそうな商品が出そろった。今後はこれらの商品化を皮切りに、『千屋牛物語』と銘打って、市内の観光資源と結びつけていく予定。そのほか、肉を粉末化して新しい利用法も検討している。
※『千屋牛』は生きた状態を「ちやうし」、加工後は「ちやぎゅう」と読む
圧力鍋で調理した『コンビーフ』からは肉のうま味が溢れる。商品化時には一般的なコンビーフによくある缶詰ではなく、ハムのようにチューブで販売する予定だ
『岡山県立新見高等学校』
治郎丸直樹(じろうまるなおき)さん
「新見の豊かな自然の中で育つ『千屋牛』は、おとなしくとても利口で、調教すれば碁盤の上に乗る芸をすることでも知られています」。その肉質はキメの細かい霜降りが最大の特徴だ。「『コンビーフ』を作ろうと思ったのはハムなどのように付加価値を付けやすいと思ったからです」。開発過程には苦労も多かったようだ。「うま味や筋のコリコリ感まで生かし切るため、ロスの少ない肉を仕入れたところ、脂肪分が多すぎて、最初はややしつこい感じになりました」。圧力鍋を使って余分な油を落としたり、セロリを多めに入れてさっぱりさせるなどの試行錯誤を経て試作品が完成した。「学校の文化祭などで試食会をしましたが、評判も良かったので、2010年1月までに商品化前の最終品質チェックの段階まで持っていく予定です」
赤身の食感や味も絶妙な黒毛和牛
『さつき屋』
谷森順照(たにもりよしてる)さん
『さつき屋』は、市内の小学校で収穫されたムラサキイモを使う季節限定の和菓子、新見市が日本で初めて電子投票を行ったことを受けて販売した『電子投票記念まんじゅう』など、アイデア商品を開発している。プロジェクトではどんな商品を開発したのだろうか。「しっかりと肉質を味わってほしかったので、具に野菜などを混ぜ込まない肉のみの『肉まん』にしました」。肉質は良いが、切り落とし部分を使ってコストを抑えている。「良い肉は塩コショウのみで食べるのが一番だと思ったのですが『肉まん』には合いませんでした。すき焼き風の甘い味付けと、焼肉のタレを使ったピリ辛味を作って試食会もしましたが、ピリ辛味の方が好評でした」。現状は小麦の生地を使っているが、今後は米粉を練り込むことも検討している。
現在は手作りだが、今後は機械化する案も
肉の味や食感を感じられるシンプルな味付け
プロジェクト実行委員長
三上眞(みかみまこと)さん
プロジェクトの発端と今後の展開
「『千屋牛』は、江戸時代からこの地域の人々とともに生活してきた家畜ですし、全国に発信していくブランドとしての品質は折り紙付きなので、いかにPRしていくかだと考えています。試作品の商品化後には、地酒などの地域の特産品とのコラボを進め、セット販売なども検討します。また、千屋牛料理が食べられるお店と観光スポットを掲載したマップを制作するなど、『千屋牛』を中心にして多角的な展開をしていく予定です」
JR東京駅から東海道・山陽新幹線でJR岡山駅へ、特急やくもに乗り換えJR新見駅へ【所要時間:約280分】
◎新大阪駅からJR新大阪駅から山陽新幹線でJR岡山駅へ、特急やくもに乗り換えJR新見駅へ【所要時間:約120分】
◎岡山駅から国道53号線を経て、山陽自動車道へ、岡山JCTで岡山自動車道へ、北房JCTで中国自動車道へ、新見ICで降りて新見市内へ【所要時間:約85分】