斬新さの光る漬け物が続々と完成!
能登半島の最先端に位置する珠洲市は、海の幸はもちろんのこと、野菜や、山菜などの山の幸にも恵まれている。さらにこの地域には、イカとイワシを原料とした日本三大魚醤のひとつ『いしる』や、伝統的な製塩法である「揚げ浜塩田の天然塩」など、地域特有の調味料が存在する。また、農業が閑散期となる冬に、杜氏を生業とする人が多いことから、酒粕が身近に手に入るのも特筆すべきところだろう。豊かな食材と、それらの魅力を最大限に引き出してくれる調味料をうまく活用していこうと、21年度の取り組みとして珠洲商工会議所が進めてきたのが、漬け物の新商品開発。既に試作品が4品ほど完成し、一般への試食も行っている。地元の食材のみで、化学調味料などを一切使わず健康と安全にも配慮して作られた漬け物は、懐かしい和の味わいのなかに個性が光る逸品ぞろいだ。
『神楽漬け(上)』『エビスかぼちゃの梅みそ粕漬け(左下)』『サザエの糀漬け(左下中)』『ソーメンかぼちゃの酒粕漬け(右下)』。それぞれに絶妙な塩気や風味が味わえる
『レストラン浜中』
浜中禎子(はまなかていこ)さん
「野菜などを昔ながらの塩漬けで保存したのが『神楽漬け』の始まりです。そこから漬け物を作り始め、複数の食材を一緒に漬け込む福神漬けのようになりました」。スイカ、メロン、キュウリ、ナス、タケノコ、レンコン、ニンジン、ワラビ、ショウガ、ゴマ、ふき、大根の12種は全て地元で採れたもの。さらにスイカやメロンなどは、栽培途中に間引きしたものを使用し、食材の有効利用に貢献している。「塩漬けする時には、地元の天然塩を使って、種類ごとに最低3ヶ月間漬け込みます。その後、塩抜きをして醤油、みりんをベースにした秘伝のタレに12時間ほど漬けて完成です」。手間と時間がかかった力作だ。また、塩漬けした食材は1年ほど保存ができるので、年間を通して地元で採れた食材が味わえるのも魅力のひとつだろう。
約500年前からある揚げ浜塩田
完成した塩はもちろん天然塩
『若富喜会(わかぶきかい)』
萩村文枝(はぎむらふみえ)さん
珠洲のエビスかぼちゃは甘味が強い
普段は主に梅干しを作っている萩村さん。梅干し以外の加工食品を作る際も、全てに梅を使うのだという。「『エビスかぼちゃの梅みそ粕漬け』には地元で採れたエビスかぼちゃ、みそ、酒粕、そして梅を使います。梅は梅干しを作る時と同じもの。エビスかぼちゃは下準備として、地元の天然塩に3~4日間漬け込み、1日干します。その後にざっくり4等分に切って、みそ、酒粕などと一緒に1ヶ月ほど漬けて完成です」。かなりの手間だが、商品化を目指すとなると、塩分や糖分まで正確に測定しなければならない。それでも開発に臨むのは地元の農家たちに貢献するためなのだという。「エビスかぼちゃは収穫が遅れると農協に出荷できないんです。どうにかそれらを利用できないかと、採算度外視でやっています」。
珠洲商工会議所
山口憲治(やまぐちけんじ)さん
プロジェクトの発端と今後の展開
「最近は『いしる』が日本三大魚醤のひとつなどと言われて、知名度を上げていますが、珠洲では能登全体のなかでもとくに杜氏の数が多く、日本四大杜氏のひとつとも言われて酒粕が豊富に手に入ります。今後も、これら一定の評価を受ける素材をうまく活用して、野菜など地元の食材の付加価値を高めていきたいと考えています。今回のプロジェクトの試作品は、2010年2/2(火)~5(金)の『東京インターナショナル・ギフト・ショー 春2010』に出展する予定です」
羽田空港から飛行機で能登空港へ、特急バス「珠洲特急」に乗り換え珠洲市内へ【所要時間:約105分】
◎新大阪駅からJR新大阪駅から特急サンダーバードでJR金沢駅へ、特急バス「珠洲特急」に乗り換え珠洲市内へ【所要時間:約320分】
◎金沢駅から県道299号線、県道60号線を経て栗崎ICで能登有料道路へ、能登空港ICで降り、珠洲道路を経て珠洲市内へ【所要時間:約150分】