岡山のフルーツと聞いて、最初に思い浮かぶのは桃だろう。実際、国内に流通する桃の品種のルーツのほとんどはこの地にあるという。そして、岡山の桃の代表格は、生産量全国一を誇る、ジューシーでとろけるような甘さが特徴の白桃。白肌の気品ある姿も美しく、見てよし食べてよしのフルーツの芸術品だ。
岡山の子どもたちに桃の絵を描いてもらうと、どの桃も白いというほどこの地では一般的な白桃。が、改めて考えてみると白桃には不思議なことがいっぱいだ。なぜ、白桃なんだろう。赤い桃と何が違うのか。どうして赤くならないのだろうか……。桃の生産者を訪ねて直接聞いてみることにした。
「おかやま夢白桃」という品種を栽培する國安農園の國安武彦さんは、白い桃が生まれた理由を「一つひとつの果実に袋をかぶせ遮光することで白くなるんじゃ」と教えてくれた。無袋で育つ赤い桃に比べ手間のかかる育成方法だが、白桃にすることで最もおいしい時期が外観から判断できる(クリーム色の果皮が成熟の目安)ため、短い旬を逃さず収穫でき、味のばらつきも少なくなる。さらに、袋掛けすることで果実に直接農薬がかからない上、害虫や病害が発生するリスクを抑えることができるのだという。
日本最初の白桃の栽培がこの地で始まったのが明治時代。以来、品種改良や技術開発が進められてきたが、ひとつの果実に費やす多大な時間と愛情が、おいしくて安全な白桃の生産のキモであることは変わらない。
「こいつは定年、ようがんばってくれたなあ」。桃の老木をいたわる國安さんの手は、古きよき職人の温かみを感じさせる。
岡山白桃の旬は7月から8月。「季節を逃してしまっては食べられないの?」とお思いの方や桃好きの方には、岡山の桃がふんだんに使われたスイーツをおすすめしたい。旬の桃の風味をそれ以外の時期にも楽しんでいただきたい、との思いから開発されたスイーツが、岡山県青果物販売が開発した「桃のフルーツプリン」。契約農家から仕入れた岡山の三種の桃(清水白桃、黄金桃、川中島白桃)がプリンとなり、ババロア風のまろやかな食感がクセになり、三つの味の食べ比べも楽しみたい。香りや甘味、酸味などそれぞれの素材の風味を最大限生かしており、岡山の桃を一挙に堪能することができる。
「こだわりの逸品『おかやま果実』」ブランドで生まれた桃を使用したスイーツは「桃のフルーツプリン」のほかにもアイスやタルトなどがある。どれも岡山の桃の豊かな風味と独創的な職人の技術が融合したこだわりのスイーツで、桃の新たな可能性を見せてくれる。果物王国に、甘い魅力が加わった。