このサイトは2020年3月31日まで稼働していた、feel NIPPONの活動報告サイトのアーカイブです。
2019年度までの活動報告をご覧いただけます(現在、更新はしておりません)。

雪国A級グルメから日本A級グルメへ

外部講師 講演

雪国A級グルメから日本A級グルメへ

~連携がはじまりつつあるA級グルメプロジェクト~

株式会社自遊人 代表取締役 岩佐十良 氏

観光地の旅館や飲食店では、地元のものを出していない

政府は国策として観光業を打ち出しているが、地域にとって観光がないと生き残れない時代を迎えている。東京で商売をするのなら自力でなんとかなるが、地域はまわりと協力しないとできない。海外からの観光客が増えるのも良いが、一方で観光地が荒らされたという意見も聞く。やはり日本人同士で活性化するのが良いだろう。

観光客の意識調査で“旅先で何をしたいか”たずねると、以前は観光名所を観ることだったが、最近は美味しいものを食べたいという声が多い。こうした旅先で美味しい物を食べたいというニーズがありながら、観光地の旅館や飲食店では地元のものを出していないのが現実だ。これは大きな機会損失であり、地域の信頼性ダウンにもつながる。地元に来てくれた観光客に本当に美味しいものを食べてもらうことは、東京で物産展をやるよりも、はるかに低コストかつ効果的だ。

今後TPPが導入されると、農家は壊滅的な打撃を受ける恐れがある。田園風景がなくなってしまったら、日本の観光資源をひとつ失ってしまう。お米や野菜をきちんと残すということを、日本中に広める必要があるのではないか。

観光と農業、加工業者をどう繋げるか

2013年12月、和食がユネスコ無形文化遺産に登録された。「多様で新鮮な食材とその持ち味を尊重」「栄養バランスに優れた健康的な食生活」「自然の美しさや季節の移ろいの表現」「正月などの年中行事と密接な関わり」という和食の4つの特徴が評価された。

ここでいう和食は、何も京懐石や高級日本料理だけに限ったことではない。無形文化遺産になったことで、地元の食材を使った地元料理も和食であり、世界から注目される対象となったのだ。

そうなると、各地域も観光を中心として農業が回るようにしなければならない。例えば、新潟の旅館やホテルが100%地元産の食材を使ったら、かなりの消費量となり、充分に生産者を守れる。例えば地域資源を使った名物メニューのように農業資源と観光資源を上手に結びつけたら、農業生産者は食材を高く買ってもらうことができ、観光と農業は良い関係を築くことができ、観光と農業が一体となって地域経済を循環させる。

食材の情報公開を行い、安心・安全な食を追求する『雪国A級グルメ』

最近、B級グルメが注目を集めているが、B級グルメはラーメン・たこ焼き・焼きそばなど戦後に広まった小麦粉の食文化である。一方でA級グルメは、ご飯・味噌・漬け物・日本酒などの昔から続いている日本人のお米・野菜の食文化だ。

このA級グルメをキーワードに、観光・農業・加工業者を結び、付加価値をつけていく取り組みが『雪国A級グルメ』である。雪国A級グルメのA級とは“永久”を意味していて、“永久に残したい味”、“永久に守りたい食文化”を表す。

この活動により、農業は「高品質なモノが評価される」「JA以外の商流が産まれる」「生産量の見込みが立つ」。観光は「質のいいお客さんがやってくる」「価格競争に巻き込まれない」。加工業者は「観光施設での販売」「仕入れルートの安定化」「自社ブランドの強化」につながる。この活動を、日本有数の豪雪地が集中する新潟県・群馬県・長野県にまたがる雪国観光圏で、地元の有志によってスタートさせたのだ。

現在、旅館は9軒、飲食店は14軒が加盟、加工品は10品が登録されている。同プロジェクトのウェブサイトでは、加盟店の星の数による評価や審査スコア、旅館の食材で使用している食材の産地情報をすべて公開するなど情報公開を徹底させている。