地域特産品開発への取り組み
恵庭商工会議所 講演
地域特産品開発への取り組み
~恵庭の名前を全国へ~
恵庭商工会議所 産業振興課 梅根裕一 氏
恵庭の地域資源は何か? 地元の道の駅では何が求められているのか?
恵庭市は人口6万8000人で、新千歳空港と札幌の約中間に位置している。そのため来道客は、恵庭を通過して札幌へ行ってしまうために観光が弱い。そこで少しでも恵庭をPRできるようなお土産を作ろうと、平成19年にジェラートを作ったのが同商工会議所の取り組みの始まりだ。当初は、網走にある『リスの森』で製造されたジェラートを地元の道の駅『花ロードえにわ』で販売しようとしたが、やはり網走のモノを恵庭で売るのは地域活性化という面で弱い。
そこで、恵庭の地域資源を活用しようとするのだが、恵庭には海がないので魚がいない。それに代わるブランド牛もない。野菜も多品種で特筆すべきものがないと苦難の連続だった。そして、資源の掘り起こしを進めたどり着いたのが、「えびすかぼちゃ」。昭和40年頃に京都から北海道に同品種の種を持ってきた際に、道内で初めて栽培に取り組んだ町が恵庭という由縁があった。このストーリー性を活かし、“恵庭産えびすかぼちゃ”を活用して商品を作れば、十分にお土産品として販売していけると着手したのが始まりだ。
平成21年には、「地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト」に採択され、専門家と提携し、年間100万人が訪れる道の駅『花ロードえにわ』での購買動向の調査と特産品開発を進めた。その結果誕生したのが、福井県鯖江市のシェフにより開発された『恵みの庭のかぼちゃプリン』だ。
平成22年も全国展開事業(特産品・観光)を受託したが、前年の経験を踏まえ、2年目は専門家を介さずに、えびすかぼちゃ冷麺・ラーメン・うどん・味噌・ロールケーキなどを多品目に渡って試作を行った。その中でも評判の良い、『恵みの庭のかぼちゃスープ』『恵みの庭のかぼちゃリゾット』『恵みの庭のうらごしえびすかぼちゃ』『花馬車プランターNonno Kampoca』を順次商品化していった。
味ではなくてモノへのこだわりをひきつぐことが大事
『恵みの庭のかぼちゃプリン』は、食材は地域資源を活用しているにも関わらず、製造は福井県で行っていた。梅根氏は、「これでは北海道産とうたえない。なんとか恵庭で作りたい!」という思いから、市内菓子店やパン屋を回って「作ってみませんか」と声がけするも、どの店舗も職人としてのプライドからすべて断られる。そこで、オープン当時から経営指導をしていたスープカレー店『リスボン』の相原 真店長に話を持ちかけたところ、「自分が食べて美味しければ作ってみたい」と賛同してもらうことができた。その後、相原氏は梅根氏と共に鯖江へ赴き、シェフのもとでレシピをマスターした。相原氏は、鯖江で「味ではなく、モノへのこだわりを引き継ぐことが大事」と感じたという。
そして、福井県鯖江市から仕入販売をしていた商品(1個120g・税込480円)を、平成23年9月に『リスボン』に製造変更して(1個・90g340円)リニューアル販売を開始した。すると、約9カ月で1万6621個が売れ、十分確保していたはずの原料が尽きてしまい、売り切れとなった。24年9月からの再販売では1年間で2万9370個、25年は1年間で2万134個を販売し、順調な推移を続けている。
全国展開の目的達成に向けて、失敗を恐れずにトライ&エラーを繰り返す
最後に梅根氏は、全国展開事業は地域資源を活用し、地域で製造し、全国に発信・展開することが理想的と言っている。
補助金を活用して試作品を作っただけでは、全国展開事業の目的を達成したことにはならず、また目標である地域の活性化にも繋がっていない。商品が売れ、地域企業の利益に繋がらなければ、長続きせず、地域を発信し続けることもできない。
今回の事業を通じて、数多くの学びを得た。例えば、問屋との取引やネット通販など、実際に取り組むことでノウハウを得られ、得られた知識は会員企業へフィードバックできる。また、通常のお土産品の原価率が20~30%であるのに対し、梅根氏達の特産品は、小規模事業者が小ロットで製造しているため、50%前後と高くなってしまう。価格に見合う商品の魅力と価値を理解してもらえなければ、購入には結びつかない。
「全国展開の目的を達成することが重要で、そのためには失敗を恐れずにトライ&エラーを繰り返すことが大切。地域の特産品が全国に知れ渡ることで、多くの方に恵庭を認知してもらい、その結果として地域に貢献できればやりがいも感じられる。今後も常に新しいことにチャレンジして、自分の壁を破りながら前に進んでいきたい」(梅根氏)。