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燕市のプレス・研磨事業者による金属加工連携

事業者視察

燕市のプレス・研磨事業者による金属加工連携

小林研業 代表 小林一夫 氏
有限会社渋木プレス工業 代表取締役専務 渋木淳 氏

燕商工会議所のアイデアと行動力、そして地域間連携の橋渡しに期待

小林研業 代表 小林一夫 氏

小さな会社で大きな仕事をする”という小林研業。「やりたくないものをやる。できないことをやる。何でもやる」が代表を務める小林一夫氏のポリシーだ。同社が一躍有名になったのは、世界中で大ヒットとなった『iPod』の鏡面加工を手掛けたことからである。この噂が一気に広まったことで、燕市の磨き屋に注目が集まり、「磨き屋シンジケート」や燕商工会議所の取り組みに対してマスコミから取材が来るようになった。そうして名前が売れると引き合いも増え、今では30都道府県の事務所と仕事を行っているが、受けきれないくらいだという。小林氏は、「助けてくれといっても断られる。それは難しい、人の嫌がる仕事をやっているから」というとおり、電子顕微鏡のパーツといった高精細を要求される仕事や、大手企業そして海外からも直接依頼が来る。

こうした活況があるのも、燕商工会議所の活躍によるところが大きい。約20万本を売り上げた『エコカップ』も、商工会議所のアイデアと行動力があったからだ。「磨き屋は作業をやれといわれれば立派なことができるが、アイデアがない。商工会議所の仕事はアイデアを出して元気を作ることだ。そして前向きに行動することで物事は良い方向に回ってくる」(小林氏)

目下の課題は後継者問題である。現在800人の磨き屋がいるが、そのほとんどが65〜70歳で年金をもらって楽に暮らせる人達だ。「技術を売っているのだから高く売らないといけない。若者が魅力を感じる環境作りが急務だ」と小林氏は指摘する。「吹けば飛ぶようなところでも、経営者の努力だけでなく、商工会議所が味方になってくれれば飯が食える。特に今後は、各地域のすぐれたモノ作りとのコラボレーションが大事だと思う。その橋渡しが商工会議所の皆さんの仕事です。頑張ってください」(小林氏)。

磨きだけでは仕事がなくなる。燕のモノ作りをしていかないと長続きしない。

有限会社渋木プレス工業 代表取締役専務 渋木淳 氏

有限会社渋木プレス工業では、通常のメカプレス機では品物に負荷を掛けてしぼるため傷が付きやすいということから、その衝撃を和らげてロスをなくす、新型のデジタルサーボフォーマ(サーボプレス)を平成20年に導入した。この噂を聞きつけた燕商工会議所の高野雅哉氏は、アイデアを温めていた『エコカップ』のプレス加工を打診してきた。

軽量化を追求した『エコカップ』は、丸形に抜いた後に3段階の搾りが必用で、飲み口と底は0.7mmだが胴体部分は0.3mmに仕上げなければならない。また、飲み口はビールの口当たりに影響するため折返しの形状が重要で、口元のカールにゴミや水が入ってさびないよう、きっちり綴じなければならない。燕ではこうした複雑な金属加工を、1社が単独で行うのではなく、それぞれに専門技術を持つ“持ち屋”が横のつながりをフル活用し、共同体となってひとつの製品を作っているのだ。

「弊社では、今までは下請けが中心でOEMの仕事を数多く行ってきた。こうした黒子の仕事も楽しいのだが、今回『エコカップ』を自社製品として初めて手がけたところ、買った人の笑顔を直接見ることができたり話もできる。こうしたお客様の声を従業員に話すと、彼らのモチベーションもあがってくる。やはり自社製品は面白い。とても勉強になった」(渋木淳氏)。