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特集第3回「ものづくり」生活用品に活かされる木工技術

木工製品は使われてこそ、価値がある。こうした前提に立ち返ることで、今まで鹿沼木工になかった製品を生み出したのが、平成19年度の鹿沼商工会議所の地域資源∞全国展開プロジェクト「首都圏北部地域木工・和紙・織物販路構築ネットワーク事業」だ。

「ニューカヌマ」と銘打たれたこれらの木工製品のコンセプトは、「典型」。湯桶やトレーなどの生活用品は、使い勝手の良い「型」が定まっている。プロジェクトでは、こうした典型的なデザインに良質の日光杉と伝統の木工技術を融合させることで、長く大切に使ってもらえるロングライフデザインを実現した。たとえば、普通湯桶には木を補強する金具が外側に付けられているが、ニューカヌマの湯桶は内側に備え付けてある。結果、よりシンプルなデザインと高い耐久性を生んだ。ニューカヌマの製品にはこうした匠の技が随所に見られる。

「木工を取り巻く環境や建築様式が変化している中、プロジェクトは時代のニーズに木工技術で応えるチャンスとして考えた」

創業60年の豊田木工所代表・豊田皓平さんは、このプロジェクトを引き受けた理由をこう語る。成果品だけでなく、意識改革の面でもプロジェクトの意義は大きかった。

「一匹狼の感が強かった職人たちが一致団結し、外部の意見も聞いていいものを作り上げた。結果的に一人ひとりが鹿沼木工の看板を背負って発信していこうという意識が強くなった」

技を伝える。それは匠から弟子へという縦の伝承だけではない。全国の消費者に向けて、鹿沼木工の技術を横に広めることでもある。そこで「発信する職人」という新たな姿は、ものづくりの国・日本の可能性を広げることにもつながる。

取材の最後に、豊田さんがポツリと言った。
「木のぬくもりって、いいもんですよ」。
 木工職人が伝えようとする何かが見えた気がした。

鱒渕木工所 鱒渕義明さん

鱒渕木工所>>

新製品の開発風景

現在開発中の木工ブラインドを手に、デザイン、素材、流通などさまざまな観点から議論が交わされる。

匠の技が「オフィス」「IT」「若者」へ

ニューカヌマの成功を受け、鹿沼商工会議所では木工製品の新たな可能性にチャレンジしている。22年度の地域資源∞全国展開プロジェクトにおいて取り組む新たなテーマ「地域固有の木工技術を活かした新たな商品開発とマーケットの開拓」では、今まで木工製品と縁遠いと思われていた「オフィス」「IT」「若者」といった分野と木工技術のハイブリッドを試みる。現在、ブラインドやパーティションなどの試作品を開発中で、ワーキンググループ代表の鱒渕義明さんは、「木工製品に接する機会を広げることで、木のあたたかみに親しみを感じる人が増えてくれれば」と意欲を語る。