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特集 第3回「ものづくり」 栃木県・鹿沼商工会議所 今、匠が伝える木のぬくもり 地域固有の木工技術を活かした新たな商品開発とマーケットの開拓

鹿沼木工の精髄である美しい組子
奥深い山林から清らかな大芦川が流れる

鹿沼市内を悠然と流れる大芦川。川の底が透けて見えるほど美しく、春には鮎が釣れる。鹿沼市内には、西北部の山々を源流とする上質の川が複数流れている。

山紫水明の地にそびえる最高の杉

松尾芭蕉のこの一句は、日光東照宮へ向かう途中、鹿沼に宿泊した際に作られた。元禄2年(1689年)当時の、山と川に囲まれ森閑とした鹿沼の情景が目に浮かぶ。こうした大自然の一方で、鹿沼の中心部は江戸時代より例幣使街道上の宿場町としてにぎわいを見せ始める。宿泊客の多くは芭蕉同様日光東照宮を目的としており、その中に、木工職人たちがいた。鹿沼市の歴史を考えると、一人の俳聖よりも彼ら名もなき匠たちの滞在のほうが重要だったのかもしれない。

「木工のまち」鹿沼。日光東照宮の造営や修理に携わった木工職人たちがこの地に逗留、あるいは永住し、その匠の技を鹿沼に伝えたことが、その異名のルーツである。以来、周囲にそびえる日光杉が建具材として適していたこともあり、細やかで美しい木工技術は建具を筆頭に継承・発展され、木工は鹿沼の地場産業となった。

鹿沼商工会議所では、こうした伝統の木工技術を現代に活かすべくさまざまな取り組みを開始している。平成19年度には「首都圏北部地域木工・和紙・織物販路構築ネットワーク事業」、22年度は「地域固有の木工技術を活かした新たな商品開発とマーケットの開拓」というテーマで、今までこの地になかった木工製品の開発に取り掛かった。それは、ものづくりの新たな挑戦であると同時に、木工製品の魅力を再確認する原点回帰の取り組みでもあった。

熟練の木工職人の手さばきには無駄がない。木と対話するようにやさしく、精確に形を浮かび上がらせる。

無駄のない木工職人の手さばき

芭蕉の好物だったそばと蒟蒻は、現在の鹿沼市の名産品。特にニラそばはニラの歯ごたえと風味がそばと抜群の相性をみせる逸品だ。

鹿沼市の名産品・ニラそば

市内から少し車を走らせれば、日光杉がそびえる山林に行き着く。間伐された杉からはやさしい木の薫りがする。

山林で目にする間伐された日光杉
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