ものづくり安城から

安城商工会議所 講演

ものづくり安城から

~世界発は世界一!異業種連携で新製品開発~

安城商工会議所 経営支援グループ 二村康輝 氏

“モノづくり”そのものを地域ブランドに

安城市は、自動車部品製造が基幹産業という人口18万人の市である。プラスチック製品が主産業で、地元自動車産業が盛んなため、今までは待っていれば仕事が来たが、今日では通用しなくなってきている。今すべきことは、自動車産業のみに依存しない構造づくりで、大手メーカーを頂点としたトップダウンのモノづくりではなく、中小企業が自社製品を生み出すための風土づくりである。

とは言っても、安城市で地域資源を活用したモノのづくりを行おうとしても、特筆すべき歴史や観光資源がない。また、部品製造という量産型モデルでは、地域ブランドに必要な“物語性”はなく、大量生産のイメージが地域ブランドにも合わない等の理由から、その成功事例は少ない。

だが、逆転の発想で考えると成功に近づいていく。成功事例が少ない分、成功した時のインパクトは大きい。地域ブランドに必要な物語性については、独自のストーリーを考えれば良い。また、大量生産であっても、消費者に訴えられる“何か”があればブランド化できる。

こうした思いから、始めたプロジェクトが『アンジョウハーツ』だ。

環境に優しい工業製品地域ブランド『ユメプラスチック』

アンジョウハーツとして、最初に取り組んだのはルール作りだった。集まった事業者の目的、作りたいモノ、やりたいコトは各種各様だ。そこで、“初期コストは誰が負担するのか”“何をもって事業を終了とするのか”“損失が生じたときの負担” “利益配分”など、後々になってもめることを最初に決めることにした。

そのうえで手がけたのは、環境に優しい工業製品の地域ブランドだ。安城市にはペットボトルキャップが月間600万個以上集まるという実態を踏まえ、これを素材にした商品開発を検討することにした。そして、キャップ860個でポリオワクチンを途上国の子どもたちに贈る「エコキャップ運動」を展開して回収活動を活性化させ、集められたキャップは、安城市内の福祉施設で、ハンディキャップを持つ方が色ごとに選別を行う。こうした工程を確立させることで、再生過程で着色剤を加えることなく、美しい発色を可能とさせた。

この再生プラスチックを『ユメプラスチック』と名付け、新たな地域資源として全国展開を行っていくことにした。

『キャップアートパネル』『きゃぷらも』が大ヒット商品に

『キャップアートパネル』

『きゃぷらも』

ユメプラスチックを活用した最初のプロジェクトが、なんとハイブリッド・ロケットの燃料。一番現実的ではないようだが、北海道の民間企業らに年間85発分を納入して少なからず利益が出ているという。

続けて行ったのがアンジョウハーツブランド製品第1弾製品『キャップアートパネル』だ。パネルを組み合わせたベースに、使用済みのペットボトルキャップを点と見立てて自由な絵を描くことができる。本製品は調査研究事業で行ったため、自費で製造するしかなく金型費用が捻出できなかった。すると、アンジョウハーツのメンバーが “出世払い”ということで、4万枚分を負担してくれた。4枚を1セットにして800円でネット通販を行っているが、イベントや文化祭等のニーズが強く、まとめ買いが発生。現在は累計で18万枚が売れ、アンジョウハーツの参加事業者には使用量に応じて利益が入る仕組みにしている。

続く第2弾製品は、ペットボトルのキャップによるプラモデル『きゃぷらも』。組み立てて楽しむことでキャラクターの愛情が倍増する、完全オーダーメイドの “プラモデル”という広報手段の提案だった。これが他のノベルティやオリジナルグッズにはない強力なPRツールになると評判になり、大手企業からの取引がどんどん増えていくことになる。

プロジェクトリーダーとして、「尖った事業」を「丸く」運営している

アンジョウハーツの目的は、プラモデルや雑貨を作ることや目先の利益を上げることが目的ではないという。二村氏は、「事業者が自身の強みを活かした新たな取り組みにより、参画した企業のそれぞれの「本業」に対して、新規顧客層の引き合い増加、新たなヒト・モノ・カネが自然と集まる体制の構築だ」と指摘する。

そのために二村氏がプロジェクトリーダーとして気をつけているのは、(1)ボランティア活動ではないこと、(2)メディアの矢面には嫌でも自分が出ること、(3)手も出し、口も出すが、責任はメンバーとシェアすること、(4)他人からの「どうせ失敗する」という否定は成功のサイン、という4つ。「尖った事業」を「丸く」運営することに意識を傾けているという。

「面白い物を作ると組織の価値が上がる。組織の価値が上がると参画している企業の注目が上がる。そして、参画企業の注目が上がると各社の本業で利益が上がるようになる」(二村氏)。