十三湖は川の水が流れ込む淡水と日本海の海水が混じり合う汽水湖で、しじみの生育に最も適している。地元では古くから食されてきたが、全国的にはまだ認知度が低いため、十三湖産しじみの素晴らしさを広く発信し、地域の活性に繋げる「十三湖しじみ貝は地域発信の旗振り役」プロジェクトが平成22年度にスタートした。
まず研究会を発足し、漁獲量、流通経路、価格、既存のしじみ料理レシピなどを調査・分析して、新しいしじみ料理の開発とレシピの募集を行った。その結果、「しじみのキッシュ」「パエリア」「しじみとキャベツの蒸し焼」「しじみのきつね焼」など、ユニークで幅広いジャンルの料理が集まり、しじみ料理の可能性と地元の期待度の高まりが伝わってきた。試食会やイベント[1]などで、来場者にアンケートを行うと「しじみラーメン」の評価が高く、今後は意見をもとに改良を加え、カップラーメンとして販売することも検討している。現在も、観光客が訪れる時期には、地元飲食店においてしじみ汁を提供してもらい、多くの人々にしじみを味わってもらう機会を増やしている。また、新メニュー「しじみの汁焼きそば」をご当地グルメとして定着させるべく、地元飲食店にレシピを公開し、講習会[2]を開催している。
全国でも梅のブランドとして有名な「紀州梅」。田辺市は梅の生産高と出荷額が全国一である。この特産品を活かしたご当地グルメを開発しようという、「紀州梅のまち田辺・農商工連携『田辺サンド』開発事業」プロジェクトが平成21年度に立ち上がった。
使用する食材は、紀州梅と地元ブランド鶏の紀州うめどりである。市内には製パン店が多いことから、梅を使ったサンドイッチに決定。「パンに梅干し!?」をキャッチコピーに「たなべぇサンド」[3]と命名した。レシピを募集すると100作以上も集まり、モニター調査の結果、高い支持を得た照り焼きチキンサンドやゴマバーガーなど9品が認定された。これらは現在も、市内のベーカリー、カフェ、レストランなどで定番メニューとして提供されており、提供店舗はガイドMAP[4]で確認することができる。それぞれが梅の使い方も異なり、照り焼き、チキンカツ、から揚げなどバリエーション豊富に個性を競っている。当初は、パンに梅という目新しさが先行したが、おいしさという実力が伴った作品が揃い、田辺市の顔となるご当地グルメとして定着している。テレビ番組でも関西の三大B級グルメのひとつとして取り上げられ、旅行雑誌でも毎年、田辺市のご当地グルメとして紹介されるようになっている。
和牛のルーツと言われ、日本三大蔓牛(つるうし)の中でも最古の蔓牛が新見の「千屋牛(ちやぎゅう)」である。専門家の評価は高いが、頭数も少ないことから全国に出回らないため、認知度が低い状態であった。そこで、この貴重な牛のブランド化を推進するために平成21年度、「日本最古の蔓牛『竹の谷蔓』の系統『千屋牛物語』ブランド戦略」が実施された。
地域ブランド「千屋牛物語」を立ち上げ、新商品を開発。地元県立高校生とともに製作した「千屋牛コンビーフ」、牛エキスの粉末化に苦労してできた「千屋牛肉まん」[5]など、モニター調査やイベントでの試食アンケートでも高い評価を得た。
また、「『千屋牛物語』新見グルメツアー」のモニターツアーでは、試食の他、千屋牛の育成場見学を行い、その歴史や品質の高さを紹介した。このツアーにより地域内外の認知度が高まった他、産学官、農商連携の活動によって関係機関からの注目も集まることとなった。現在は、改良を重ねて商品化された「千屋牛シチュー・ド・ビーフ」[6]を販売しているが、今後も、千屋牛と地元特産品をコラボした新作の商品化を推進中である。
家具、木工のまちとして有名な大川市だが、豊かな自然に恵まれ、イチゴやウナギなど特産品が多く、農水産業も盛んである。このふたつを連携した「木が身近にある食生活」を提案し、新たなビジネスを生み出そうというプロジェクトが、平成21年度「『食』と『木』のコラボレーション事業」である。
インテリア、料理の専門家をメインにした委員会を設立し、「いい物を長く使う」をテーマに、木を使った食器の製作、郷土食の新メニューを開発した。これら試作品を「大川コンセルヴ」というブランド名をつけ、展示会に出展した。特に大きな反響を呼んだのが東京での共同展示商談会「feel NIPPON 春2012」で、流通業者からは「価格表や見積もりが欲しい」「納期を知りたい」の問い合わせが多くあり、消費者からは特に女性から「かわいい」「センスが良い」との好評を得た。
現在もプロジェクトは継続中で、「食」と「木」のコラボによって体感できる、ぬくもりある時間を広く伝えるべく、インターネット販売も開始した。今後も新商品の開発[7]や現商品の改良、イベント販売など精力的に活動する予定である。